Explore the Human Mind

北米大学院留学の準備,心理学研究,ブレインストーミングなどをトピックとするブログ

自己解釈の文化差 ⇒認知,感情,動機づけに影響。

Markus, H. R., & Kitayama, S. (1991). Culture and the self: Implications for cognition, emotion, and motivation. Psychological Review, 98(2), 224–253. 

DOI: https://doi.org/10.1037/0033-295X.98.2.224

 

 

要旨

異なる文化に住む人々は,自己・他者・2の相互依存性への解釈が著しく異なる。

これらの解釈は,認知・感情・動機づけを含んだ個人の経験の本質に影響を与え,多くの場合は決定づける。

多くのアジア系文化には,相互的な個人の基盤的関連を主張する明確な個人観を持つ。

強調することとして,他者と接することや他者への適合,調和のとれた相互依存がある。

アメリカの文化では,個人間のこのようなあからさまな繋がりを想定も評価もしていない。

逆に,個人は自己に注意を払うことにより,また独自の内的属性を発見/表現することにより,他者からの独立性を保とうとする。

ここで提案されているように,これらの解釈は,かつて想像されていたよりも,さらに強力である。

心理学と人類学の両方から自己の理論を統合して,独立のような自己解釈と相互依存のような自己解釈との違いを詳細に定義する。

こうした分岐した解釈は,それぞれ認知・感情・動機づけに対して一連の特定の結果を持つはずである。

そこで,このような結果が提案され,関連した実証的文献がレビューされている。

自己解釈の違いに注目すると,一見すると一貫しない実証研究も一致させることができ,何が文化的側面なしの認知・感情・動機づけだと考えられてきたのかという問いをもたらす。

 

 

メモ:

文化心理学研究の萌芽的位置にある論文,マーカス&北山(1991)。

長いなあ。

どうやってこの提案ができたのかは気になる。

仕事と意味と遺伝子調節 ~CTRA発現とwell-beingの関連~

Kitayama, S., Akutsu, S., Uchida, Y. and Cole, S. W. (2016) Work, meaning, and gene ragulation: Findings from a Japanese information technology firm. Psychoneuroendocrinology, 72, 175-181.

DOI: https://doi.org/10.1016/j.psyneuen.2016.07.004

 

 

Key Words

Gene regulation, Well-being, Work meaning, interdependence with others

 

要約

人生の意味は,典型的には目的感覚や成長,社会的定着(=ユーダイモニックwell-being: EWB)に映し出されるのだが,かなり望ましい健康状態と関連してきた。

特に,この経験は,困難に反応するconserved transcriptional(CTRA)と逆に関連する。

CTRAとは,ウイルス抵抗に関する遺伝子の炎症/ダウン・レギュレーションに関わるアップ・レギュレーションの遺伝子に関連するものである(?)。

しかしながら,これまで,このtranscriptomeのプロファイルがどのように特定の社会文化的文脈で位置づけられているのか分からなかった。

本稿では,日本の大規模IT企業に勤める106名の男性workersを検証し,CTRAが一般的なEWBだけでなく,自分の仕事に意味を感じたり,仕事場で他者と相互作用している感覚に由来する文脈的な意味の感覚(これはEWBとどう違うの?)とも,逆に関連することが分かった。

これらの結果は,人生の意味を規定する社会文化的決定因を含めることで,これまで考えられてきた「個人的well-being」と「CTRA遺伝子発現」との関連を広げる。

 

 

メモ

2019年の内田先生の講演で紹介されていた論文。

講演の文脈で聴くと面白かったが,論文の要旨単体で見ると,この発見にどういう意味があるのかイマイチ掴めない。

これはイントロと議論を見なければ分からないような。

自己報告尺度だけじゃなく,生理学的(?)尺度で見ても,日本人のワークスペースでは他者との相互作用がCTRAを下げることが重要,というところだろうか。。

分からん。

 

自己の文化的神経科学~脳の社会的基盤を理解する~

Shinobu Kitayama, Jiyoung Park, Cultural neuroscience of the self: understanding the social grounding of the brainSocial Cognitive and Affective Neuroscience, Volume 5, Issue 2-3, June/September 2010, Pages 111–129

https://doi.org/10.1093/scan/nsq052 

 

 

要約

文化神経科学は,文化・心・脳の相互関係を調べる学際的な研究領域である。

この研究領域は,心理的過程における文化バリエーションの科学的根拠の増加と,社会的/認知的神経科学の最近の発展の両方を描き,

文化が,価値観・意味・慣習・日常の社会的現実を構成する人工物の混合として,どのようにその文化成員の一人ひとりの心理やその根底となる脳と相互作用するのかを理解しようとしている。

本稿では,脳のプロセスが文化的ツールや実践によって適応的に形成される驚くべき度合いを証明した研究に関して簡単にレビューし,

自己呈示・認知・感情・動機づけに関する脳プロセスの文化的バリエーションについて議論する。

そして,次の2つを提言する。

(1) 独立性や相互独立性といった文化の主な価値観は,文化的課題の組み立て方(例:文化的価値観を達成するようにデザインされた日常ルーティーン)に影響を受ける。

(2) このような課題への活発で持続的な従事は,脳の文化的にパターン化された神経活動を生み出し,それが自己やアイデンティティの体現化した構成の基礎となる。

最後に,文化と脳研究のインプリケーションが議論された。

 

 

メモ

要約の和訳に意訳がなくて,自分の理解がいかに浅いかが分かる。

ヒトはある文化に適応すると,彼ら一人一人の神経回路(神経活動)のパターンをも変え,自己やアイデンティティを築く。(…ふーん('_')。自己やアイデンティティを築く?)

で,しかも,自己呈示~動機づけにもこの文化的違いが影響する?

つまり,環境(文化)⇒神経活動パターン⇒Ⓐ自己やアイデンティティの在り方,Ⓑ自己呈示~動機づけの在り方。みたいな道筋があるのか??

 

てか,文化的課題って何。日常ルーティーン?

 

分からないことが多すぎて,何も吸収できない。

でも被引用回数が多かったな,このレビュー論文。

読んでみたい。

読んで何かわかったらメモを追加したい。

感謝すれば関係は良くなる? 結婚関係における感謝の特性・気分・表現の相互作用

Leong JLT, Chen SX, Fung HHL, Bond MH, Siu NYF, Zhu JY. Is Gratitude Always Beneficial to Interpersonal Relationships? The Interplay of Grateful Disposition, Grateful Mood, and Grateful Expression Among Married Couples. Pers Soc Psychol Bull. 2020;46(1):64‐78.

doi:10.1177/0146167219842868

 

Key Words

gratitude, dyadic interdependence(二者相互依存), marital satisfaction, sincerity

 

要旨

個人/個人間で,感謝のポジティブな結果が研究されてきた。

感謝と関係的well-beingのダイナミックなプロセスを明らかにするため,現在進行形の親密な関係における,感謝の特性・感謝の気分・感謝の表現の相互作用を検討した。

香港の中国人カップル100組を対象に,3週にわたって研究に参加してもらった(3時点)。

Actor-Partner Interdependenceモデルを採用したところ,時点1では,感謝の特性は本人の感謝の気分だけでなくパートナーの感謝の気分を予測し,それら両方が結婚満足感を予測していた。

時点2では,カップルを無作為に2条件に割り当て,2週間にわたって効果を検証した。すなわち,片方に感謝日記をつけ続けてもらうか,自分のパートナーに大げさに感謝を表現してもらうかである。

その結果,時点3におけるカップルの感謝の気分を高めたことから,両介入効果の高さがうかがえる。

しかしながら,結婚満足感の変容は,感謝をする側とされた側で異なっており,妻の感謝の表現を心がこもっていないと感じた夫は,結婚満足感が下がっていた。

本研究は,感謝の表現と関係改善を評価する境界条件を明らかにし,社会的交換(social exchange)とカップルセラピーの示唆を与えた。

 

 

メモ

妻からの感謝を「心が込められてない」と思っているなら,確かに結婚満足感は低いだろうなあ。

そもそも,感謝の表現が結婚満足感に影響を及ぼすところがミソなんだろうか。

夫からの感謝は,妻の結婚満足感の知覚には関係ないのか?

それもどうなんだ。冷たくないか,妻よ。

うーん,またメモを追加します。最近こればっかだな。

 

 

人柄や性格が外見的魅力に影響する? 進化的観点も含める( ゚Д゚)

Kevin M Kniffin & David Sloan Wilson (2004) The effect of nonphysical traits on the perception of physical attractiveness: Three naturalistic studies. Evolution and Human Behavior, 25(2), 88-101.

doi: https://doi.org/10.1016/S1090-5138(04)00006-6

 

 

Key Words

Physical attractiveness, Beauty, Aesthetics, Evolutionary psychology, Task-oriented groups

 

 

要旨

進化的に見ると,美しさは身体的健康の指標と考えられている。

社会的パートナーの身体的健康は,身体的/非身体的特性の両方から判断される。

ということは,社会的パートナーの(perceived)美しさは,外見的特性(waist-to-hip ratioや顔のシンメトリー)に加えて,liking・尊敬・親しみやすさ・共有目標への貢献度といった非身体的特性の影響も受けることになるだろう。

そこで,3つの研究を行い,社会的パートナーは,非身体的要因の影響を強く受けて身体的魅力の判断をするか検討した。

男性より女性の方が非身体的要因の影響を強く受けていて(これは判断する側として?),それぞれの性別ごとで個人差が大きかった。

見知らぬ人の純粋な身体的特徴の評価に基づいた身体的魅力の研究は,最も重要な要因を見落としているのかもしれない。

 

 

メモ

「うん,まあそうだよなあ」という結果が科学的に検証された印象。

進化的にどういう意味があるかを考えると,深堀り出来る気がするんだよなあ。

どこまで深堀されているんだろうか。

この間の女性の自尊心とも関わってくるんだろうか。

またメモを追加しよう。

 

 

ヒトは一夫一妻的か?

Schacht R and Kramer KL (2019) Are We Monogamous? A Review of the Evolution of Pair-Bonding in Humans and Its Contemporary Variation Cross-Culturally. Front. Ecol. Evol. 7:230.

doi: 10.3389/fevo.2019.00230

 

 

要旨

長く研究されているにも拘らず,ヒトのmating systemは捉えがたい。

単純な分類方法が異種間比較に用いられているが,一夫一妻制・一妻多夫制・一夫多妻制の結婚システムが今日の人間社会に存在する。

さらに,sexual relationshipは婚姻関係の外で/前後で生まれ,その結果ほとんどの社会で多様な婚姻関係やmating relationshipが出現した。

mating systemの分類をさらに複雑化すれば,古来からのmating systemを示すのに用いられる,ヒト特有の生物学的特徴の解釈可能性を増やすことができる。

これに関して,本レビューは次の洞察を提示する。

1) 一夫多妻制は多くの社会で社会的に認められているが,一夫一妻制は文化間のある集団内で優勢の結婚形式である。

2) 結婚の外にあるsexは社会の中に起きるが,それでも,ヒトのextra pair paternity rateは比較的に低い,社会的に一夫一妻制の鳥類や哺乳類のそれと比較すると。

3) ある解剖学的特徴の進化のタイミングはオープンに討論されてきたが,sexual dimorphism(性的二型性,男女差)と相対的精巣サイズは,性的選択の歴史が大型類人猿の流れから分岐すること示す。

以上から,我々は次の結論を得た。

人の社会には,結婚形式・婚外の事情・関係の安定性・父親が投資する方法の観点で,様々な民俗学的例が多く存在するが,pair-bondはヒトのmating relationship特有の特徴である。

pair-bondは一妻多夫制や一夫多妻制を通して表現されるかもしれないが,一夫一妻制の連続体上で共通して見られるものだ。

 

 

メモ

 引っかかると思ったけど,なんだか難しい。

和訳したのに理解できない。

しばらく放っておこう。また理解できる日が来るかも。

 

 

 

Emotional Supportはお得か? 独立的/相互独立的な文化圏でのWell-beingと健康

Uchida, Y., Kitayama, S., Mesquita, B., Reyes, J. A. S., & Morling, B. (2008). Is Perceived Emotional Support Beneficial? Well-Being and Health in Independent and Interdependent Cultures. Personality and Social Psychology Bulletin, 34(6), 741–754.

https://doi.org/10.1177/0146167208315157

 

要旨

これまでの研究では,欧米文化では,emotional supportの知覚とwell-beingとの間に関連がないか或いは小さいとされてきた。

筆者はemotional supportにベネフィットがないという矛盾した結果は,独立的自己観(vs. 協調的自己観)優勢の文化に特有の事ではないかと仮説を立てた。

研究1は,大学生を対象に検討した。

結果は予測通りで,欧米人においてはemotional supportが主観的well-beingに及ぼす正の影響が弱く,自尊感情が統制されるとその影響が完全に消失した。対して,アジア圏に住むアジア人(日本人,フィリピン人)においては,自尊感情を統制しても,emotional supportが主観的well-beingに正に影響していた。

研究2は,対象を日本人とアメリカ人の成人に広げた。彼らは人生の中間地点にいて,well-beingと身体的健康の観点から検討した。

全体として,本研究は,文化がemotional supportの知覚が及ぼす影響を媒介することを示す結果となった。

 

Keywords:

perceived emotional support, self-esteem, well-being, culture, independence, interdependence

 

 

メモ

この論文は別の論文で何度か引用されていたのを見たことがある。

文化心理学の論文の中でも重要なんだろうな,と思ってピックアップした。

できればフルで読みたい。うん,読もう。

さらに余談だが,内田先生の論文はそれなりに収集していて,この間あさっていた時に興味深いパス図を見た。

その図が載っているのはこの論文だと思ったけど違ったみたい。また確認します。

 

でもこの結果もかなり興味深い。

独立的自己観が優勢の欧米文化では,emotional supportがwell-beingに影響しない。

正確には,well-beingに及ぼす影響からself-esteemに及ぼす影響を除くと,その影響力がなくなってしまう。

欧米文化圏に生きる人々は,emotional supportさえ自尊心の肥やしになるのかもしれない(回帰分析のようなので「かも」)。

 

これはMarkus & Kitayama (1991)に通ずるよね,だって,欧米文化の人の自己観はかなり周囲の人間関係から独立しているから。

ただ,この自己と周囲の人とが独立しているという感じがいまだにピンとこない。一体どういう感じなんだろう。

そもそも北山(2012)は,明治期でも現代でも日本人の考える「個人主義」というのは,欧米人の考える「個人主義」とは決定的に質が異なるらしい。

日本人の実践している個人主義を見ると,欧米人は「…いや,そうじゃないんだよなあ(苦笑)」と思うんだろうか。

 

これは話すと長くなるが,私は「私は個人主義だから」と,他者との人間関係を築くのを下手な理由にするのは逃げだと思っている(というか,そんな簡単に割り切っていいものかなという危機感を抱く)。

これを初めて思ったのは,米津玄師さんが初めてメディアに露出されて,インタビューを受けていらしたときの言葉を聞いた時だ。

「僕は個人主義なんです」とおっしゃっていた。

私が記憶している限りでは,彼は昔は仲間とバンドを組んでいたらしい。でも,創作意欲がすごくて,自分で「こうしたい」と思ったら意見を曲げられなくて,結局仲間から離れて自分が自由に創作できるニコニコに移ってハチになったらしい(マトリョーシカ大好きです)。

そのあと個人主義のタイトルの本を探した。で,出会ったのが夏目漱石

実は北山先生も引用なさっていたので,少し嬉しかった。その本は今もkindleに入っている。

その本を読んでどう思ったかはメモしていなかったので忘れてしまったが,どうやら日本人が考えて実践してきた個人主義は「にわか」なようだ。

米津さんの個人主義がどういうものかとか,それが「にわか」かどうかは定かではないし,分析するつもりもないが,たしかに,多くの日本人にとって独立と協調のバランスがかなり難しい。

個人主義の本質を外しているため,個人主義になると孤独になってしまう。

私も学部の時の政策研究プロジェクトでワンマンになったことがある。とても反省していて,今でも思い出しては「うわ~…」と悶える黒歴史になっている。

欧米人の個人主義はなぜ孤立に陥らないのか?いや,本当に陥らないのか?

私たち,少なくとも私が実践していて今現在苦しんでいる個人主義と,どう違うんだろうか。

ほとんど日記みたいな論文のメモになってしまった。

 

とまあ,こうしたバックグラウンドがあることを踏まえて,内田先生たちの論文に話を戻すと,emotional supportが自尊心を経由してwell-beingを高めるというのは,なんというか自尊心(自己像?)が門番のような役割をしているというイメージにつながった。

アジア圏の文化では,emotional supportが直接well-beingに影響するため,これを無くすと途端に幸福感が低減する(もちろん他の代替要因で補えるだろうが)。

 

一体,どうしてこの仮説が生まれたのか,そしてこの結果をどうディスカッションしているのか,気になる。

私の推察だと知識不足も相まってここまでしか及ばないから。

何はともあれ論文全体を読んでみよう。